道鉦は片付けの手を止めた。何となく自分の部屋を整理してみたが、意外と広かった事に気づく。
荷物のほとんど(部屋を圧迫していた原因)は漫画やらラノベなので、時間は掛からなかった。
「これまた懐かしい物が・・・どこかに行っちゃったと思ってたのに」
鎌倉に出たばかりの頃に撮った写真である。背景にはもう見慣れた大仏。
写った兄の表情は今よりも堅い。自分も同じだった。互いの距離も測りがたく、妙な間が見て取れる。
最初に出来た放っておけない友人も写っている。敬愛する義姉(もっとも、当時はそう呼べていなかったが)は変わらず凛々しい。現在の大家も笑顔を浮かべている。他にも数人。
多くの友人を得た物だ、と年齢不相応な感想を抱き思わず苦笑した。
「ま、人には恵まれてますよねぇ」
大事な写真をどうするか、と思案に耽ったがすぐに思いつく。
簡単だ。飾れば良い。
兄は嫌がるだろうが、それもまた面白いだろう。
夏休みも残す所あとわずかだ。
兄とまた泳ぎに行っても良いし、愛の巣にお邪魔しても良い。友人達と買い物に行くのも良いだろう。
まぁ、二学期が始まればどうせ皆には会えるのだろうが。
ここで道鉦は気づく。
出来れば気づきたくなかったが、目を逸らしていい問題でもない。
深呼吸を三つ。
兄に電話を掛けた。義姉上もいらっしゃれば良いのだが。
繋がる。
「兄上、良いですか。落ち着いて聞いて下さい。そして、ぼくを助けて下さい」
「どうした?」
「いえ、実は・・・」
「早く言えよ」
玖世道鉦は一切の宿題を行っていなかった。九月まで一週間を残すだけ。
まだ、暑いが既に暦の上では秋である。